水色のなかま

このブログはフィクションです。物語の設定は主人公の紹介をご覧ください。

第三章 水色のなかま ㉞死んだ人と生きている人の気持ちのズレ

水色のなかま)人の気持ちっていうのは、複雑なものだ。

 

そうそう。あと、僕が思うには、人が死ぬと、成仏した部分と心残りの部分があって、心残りの部分だけが地上に残り、幽霊さんとして、いまだ人々に語り掛け続けてる感じがしてるんだけど、その辺のところは、実際どうなんだろう、と思うよ。

それというのも、妻の祖父が亡くなった時、僕は、確かに、お葬式で、先に逝った親戚や兄弟たちに囲まれて、嬉しそうに笑っているおじいさんを見たんだ。”会いたかった人たちが、お迎えに来て、成仏するんだなー”、と思い、嬉しかったんだ。

ところが、先日、犬が死んで火葬を申し込みに行った時、近くだったので、おじいさんのお墓にもお参りをしたのだけど、その時におじいさんの声が聞こえて、墓じゃなくて実家に来てほしいんだ、と言われちゃって。

実家は、今は、妻の兄弟のトム君が住んでいて、名義上もトム君の名義になっていて、トム君は、お仏壇もきちんと祀ってくれているんだけどね、どうやらトムくんのことが心配だったみたいなんです。

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それで、僕、迷ったんだけど、トム君に電話してみたんだ。大丈夫だよね、と。

その時に、初めて、僕に霊感があることも打ち明けて、おじいちゃんが心配しているようだけど、と言ってみたんだ。

でも、元気に生活していたし、もともと芸術家だから、世間の常識とはかけ離れた価値観を持っている人なので、僕の霊感のカミングアウトなどなんのその、それ以上に、何か分からない話を長くして、その後は、機嫌よく電話を切ってくれたんだ。

ほらね、大丈夫じゃん、と、僕は思って、死んだおじいさんの気持ちと、生きてるトム君の気持ちにズレがあるなー、と思って、さて、これからどうしたもんかと。

 

水色のなかま)まず、始めの質問から話そう。

人は死ぬと、魂が体から離れるだろう。その時に、地上に未練のない魂なら、幽霊となって、人々の間を浮遊することはない。でも、未練のある魂だった場合、君の言う通り、気持ちの一部が地上に残ってしまう場合があるんだ。本当は、全部引きあがった方がいいのだが、なかなかそういうわけにもいかないようだ。

地上での出来事は、いやおうなしに胸を打つ、体があるってことは、精神にも体の痛みが刻み込まれ、出来事としては、説明してしまったらそれだけか、となるような事柄であっても、体を持って、それを経験してともなると、意外にも魂にダメージを受けているものなんだ。

そのおじいさんにとっては、トム君が、少々浮世離れしていて危険だし、芸術にのめり込むあまり、生活の維持ができなくなって、以前は、たびたび病院へかかったりしていたのを見てきて、自分がずっと守ってきたという持続の意識が、まだ残っているのと、こういうトム君を置いていくには心配だ、という、生前何度も思った心配事が、いまだ晴れぬのだろう。

 

でもね、おじいさんを安心させるためだけには、僕は、人生を裂けないよ。妻に言おうものなら、妻も怒り出すだろうね。妻は、実家で、いろいろ苦労をして、いわば僕と同じ境遇だったなもので、トム君ともあまり折り合いがつかなくて、今の家庭になって、やっと幸せと安心を手に入れた身なんだから。

それに、妻も、まるっきりトム君を無視しているわけではなくて、できる範囲では、手を貸している状態だから、これ以上、やってあげたら?とは、ちょっと僕からは言えないなー。

 

水色のなかま)その経験が、結局おまえの人生の厚みとなって、今後、人様と幽霊との間を取り持つ時に、役に立つのだろう。双方の意見が食い違うことなど、今後、日常茶飯事だぞ。

 

たしかにね。昨日のブログに引き続いて、これも勉強の一つだね。こういうことこそ勉強だ、と言うべきかな。

 

ちなみに、僕にも、トム君との関りをなるべく避けたい気持ちがあって。

トム君は、穏やかな性格だし、芸術家だから、異次元的な話も否定せず聞いてくれるような、とても話せる部分はあるのだけど、一方で、年功序列のお家主義者なんだよー。

僕の実家と同じ雰囲気で、苦手なんだよなー。

 

水色のなかま)笑。

それで、このさき、幽霊であるおじいさんと、トム君の気持ちのズレを、どうやってさばいていく気かな?

 

うーん、今は、おじいさんに、心配いらないよ、とこんこんと伝えるかな。

今は家の改築をしていて、周りにいる人たち、業者さん、ご近所の方々など、僕が直接何度も会話をして、いろんな話をして、安心できる方々だと確認済みだから。

あと、おじいさんがトム君を守って世話してきたようには、とてもじゃないけど、僕たちにできるはずもない、その立場でもないしね。

そして、トム君も、おじいさんと離れて、自分の可能性を広げる機会を、今、与えられてる最中でもあると、僕は思うんだ。

人として磨くべきは、芸術面だけじゃないからね、生活面とか、人付き合いとか、ものの考え方とかもね、おじいさんに守られていない身で、いろいろ体験し、刺激を受けて、また伸びて、ってね。

トム君が、おじいさんの植木鉢から出て、地植えになれるように、僕たちは、見守りたいと思うよ。

 

水色のなかま)そう、その人の持ち味を生かしてだな。

 

そう、持ち味消したら意味がない。個性的が一番いい。僕はそう思うけどね。

 

水色のなかま)そうして考え、学ぶ姿勢の全部が子どものためになってるさ。

 

ならば、これからも勉強だー笑。

 

 

(幽霊さんの声は、なかなか現実には届かなくても、僕は愛を感じるよ。)

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